私へのコラージュ/草野春心
闇へ一歩目を踏み出すとき、無意識に軽ん
じられる思考過程があるのを知るがいい。
五丁目の片隅に建つ、煙突のついた昔な
がらの工場。高速で運動しているベルトコ
ンベアを私は逆走している。私と、それか
ら私と、その他大勢の私……その光景を克
明に記録した映像が昨夜未明ささやかなニ
ュースとなり、九番目のあなたが教えてく
れる。三十二番目の私に、加工済の音声で。
かつて愛した一枚のレコードを彼と呼び、
水面に写った得体の知れぬ影たちを彼らと
呼び、あなたのことを彼女と呼ぶとき、夢
の中の無限廊下で苛まれているのが私であ
る。私はしばし立ち尽くし、絶えず色を変
えてゆくその殺風景を歩いてゆくのだが、
足と床は永遠に接触することはないだろう。
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