月の嗤うさき1〜2/……とある蛙
褐色の水面の下に見えないのだが、
彼は赤い顔をしてじっと我慢して待った。
待った待った待った待った
まったまったまったまった
待っている間に彼は眼が悪くなった。
鼻が利かなくなった。
木登りが疎ましくなった。
そして、生きている意味を考えるようになった。
一匹だけ掛かった魚は、
赤い色の魚で腐ったような臭いを発していた。
それを貪り食らって
突然恥掻きっ子は脳髄を重く感じた
地上に降り立った彼は真っすぐ天を仰いだ。
天頂には黒い月が輝き星一つ無い。
右腕を真っすぐ上げ
彼は天頂の黒い月を指さした。
彼は 今 ヒトになる。
っと 同時に私の中に薄暗い想念が横切る。
そして、
そして、孤独、寂寥感
悩みという名の荷物を背負って
沼の周りの黄色い道を歩きだした。
ゆっくりと
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