月の嗤うさき/……とある蛙
 
歩いて歩いて歩いて歩いた。
彼の行く手を阻む森の影
彼の目を眩ます霧の魔物
彼の鼻腔を破壊する強烈な腐敗臭
彼の耳元で囁かれる断末魔の呟き
彼の足下を掬う臭気のある泥腐敗物
彼の頭上には青い月明かり
ほうほう と鳴く梟は山の猖獗
闇の怪物の分身だ
ホウホウ
ホウホウホウホウ
ホウホウ

夜道に灯りはないが
月明かりのもと
月の与える智慧に
道行きを急ぐイザナギ
ヒトヒトと歩く彼に
ヒトとなることが何ほどかの意味があるのだろうか


彼の足下はうねったまま
彼の歩みは逞しく
雄々しく彼の行き先に続いて行く
延々と歩いた先はヒトのいる先
月は智慧を彼に与える。
智慧は彼に苦悩と目的を与え
伝えるヒトを探す。


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