涙の神保町/花形新次
 
その昔、私は東急田園都市線沿線に住んでいて
学校が水道橋にありましたから
神保町は庭みたいなものでした
毎日のように行きました、古本を買いに
詩集?いいえ、詩集なんか
一冊も買ったことありません
もっぱらエロ本ですよ
鞄の中を好みのエロ本で一杯にして
家路を急ぐときの
あの何とも言えない高揚感
堪らないですよ
ああ懐かしいなあ


 いつも群れ飛ぶ
 カラスなら
 ゴミを漁れば
 いいものを

 神田の灯りが
 芳賀書店の灯りが
 ネットにおされて
 泣いている

 取るに足らない
 プライドが
 そうはさせない
 私は馬鹿ね

 俯き加減で
 出入りする
 ビニ本店があった町


 








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