秘密荘厳大学文学部/済谷川蛍
 
「秋山さんも誰かに似てる気がしますね」
 「えっ、誰?」
 何か珍妙な有名人の名前を言われそうで焦った。
 「なんだか私の小学生時代に好きだった人に似てます」
 私は思いっきり噴き出して笑った。唾が彼女の服にかかってしまい、彼女を拝むやら手をバタバタさせるやらで踊念仏を無我夢中で踊ってるようだった。これだから女は…!と思った。散々男を持ち上げてその気にさせるのだ。小学生のとき、というのが誤解させないボーダーラインのつもりだろうが、男はすぐその気になっちまう。
 「コホン、『車輪の下』ならアパートにあるから話せるんだけど」
 「あ、お願いします」
 調子外れの校歌のチャイムが鳴り、彼女
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