連詩 「星一つ」 奥主 榮 萌木 碧水/鵜飼千代子
橙に染まることはあっても
緋の季節は 彼方へと去り
空はただ 紺のトーンへと落ちていく
ロイヤルコペンハーゲンブルーに暮れる今日は
やがて三日月の窓の明かりを際立たせる
グラデーションの中に塗り込められる
色彩のあざやかさに惑わされるまいと
きらり 輝く星一つ
レゲエとヤシと白いパラソルと
空は深く深く夜へ紺を沈めていく
深い海流の奥底へ 水泡をまとい
マリンスノーを舞わせる 風花のように
急ぐことなく ゆっくり ゆっくり ふりつもる
何よりも大切なものの形を崩さないまま
太古から残された 時の形見のように
ひとの いのちと こころとを かたどったまま
か細く 深く息をする
あがなわれなかった生命の流れの
一つひとつの道標を辿るように
空にぽつんと浮かぶ
光を宿していく
1997年 7月 23日 萌木 碧水 & 奥主 榮
初出 NIFTY SERVE 旧FPOEM
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