人魚姫の祈り/岡崎師
薬指の痛み
死の泡
剥がされた鱗
枯れた太陽
静かな海
ここはどこ わたしはだれ
白い雲
潰された片眼 灰色の空
黒い月 幸福の指輪はどこに
燃え尽きた光 割れた身体
拉げた額に 祈りの白い雨が降る
ここはどこ わたしはどこ
光が一つ 減ってゆく
闇が一つ 増えてゆく
ぼくはだれ きみはだれ
君と僕は約束をした
君はその約束を明日になったら忘れてしまう
僕は君に祈った
ブリキの冠が海に投げ捨てられる前に
二人で森に行くと約束をした
僕は君の手を取って君の額に口をつけた
君は人を思い描いて また 眠る事に失敗した
切断した薬指の祈り
僕は君の首を締めている
片眼の明りが消え
鈍い光が 窓から入る
とても静かだった ここは
人魚姫の祈りの海
前 グループ"近づく鉄塔と廻る鳥たち"
編 削 Point(1)