【批評祭参加作品】迷子論序説/岡部淳太郎
えば、道は多すぎてあまりにも複雑すぎる。だが、それだけでは人が道に迷う心身両面からの理由を説明出来ないだろう。道が多すぎて複雑すぎるのは、人に対する一種の罠のようなものだと考えてみよう。道はたしかに秩序とともにあり、秩序を代弁するものであるかに見えるが、秩序とはもともと混沌を内包するものではなかったか。秩序はその中に混沌を胚胎し、ふとした時にそれが隙間から滲み出してしまうのだ。たとえば夜に幽霊が現れるように、条件さえ整えば秩序は混沌を吐き出してしまう。道は人や物を目的地まで導くものとして作られ整備され、人もそう思っている。だが、道の秩序の中に隠れた混沌がそっと息を潜めて道の上を行く者をうかがってい
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