批評祭参加作品■「美しいミサイル」 いとう/たりぽん(大理 奔)
。でも美しさは誰も殺すことはない、美しいというそれだけでは。作者の中の「美しいミサイル」はいったいなんだろう。美しいとは。ミサイルは誰もが持つ凶暴な牙のような武器。「弱いまま/生きていられますように」と願えば願うほどいつかミサイルは放たれ、何かを得て何かを失っていく。孤独なまま過ごせない弱さと閉じられていく自我。強さが自分の輪郭を奪っていく。
公園の砂場で不思議な風紋を踏みつけてみる。儚いその輪郭はあっさりとその姿を失う。そして無数の砂だけがある。先程まで風紋をつくっていた砂が。風紋とは輪郭の名前だったろうか。砂にはその本質はなく、ただ風の姿を一瞬写し取った・・・この詩のように。
(文中敬称略)
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