批評祭参加作品■走るレプタイル/石川和広
 
やの人間なのである。
 しかし春樹さんの言うこともよくわかる。たぶん自分の人生に起こる出来事や、自分の生きているこの世界のことに何らかのこだわりみたいなものがあって人は書くことに向かう。驚きとか怒りとか悦びとかとっかかりは何でもいいのだが、それを何とか形にできないか、保存しておくことはできないかと思うから創作に向かうのである。
 けれども、世界はたえず流転し、私の存在もかよわいウタカタのものである。たちまち流されてしまいかねない。
 だから自分のスタイルを作る。春樹さんのこの本はそのスタイルの一例を語っているように思われる。ここで引用。

 生まれつき才能に恵まれた小説家は、何を
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   グループ"第3回批評祭参加作品"
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