尾崎喜八「山の絵本」を読む/渡邉建志
ある。 p.11(岩波文庫)
「一個のゲーテたることさえ」というのがすごい。ゲーテたることさえ!ここの文章のリズムは、やはり、リズムだなあとおもう。内容に関しては、まあそうですね、と。
さらにリズムについて。
一天晴れて日は暖かい。物みな明潔な山地田園の八月の末。胡麻がみのり、玉蜀黍が金に笑みわれ、雁来紅の赤や黄の傍で、懸けつらねた瓢箪が白い。この土地で高蜻蛉と呼ぶ薄羽黄蜻蛉の群が、道路の上の空間の或る高さで往ったり来たりしている。
私たちはのんびりした気持ちで村道を行く。 p.13
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