■批評祭参加作品■田村隆一の「腐敗性物質」について少しー初期の田村の詩世界/石川和広
 
、みれば、田村のほうが、深刻に大戦の影を、斜めからではなく、正面から受け止めているように思う。あくまで、「文明論としての大戦」だが。そういう構えのようなもの、概念性は堅固だ。また鮎川を入れると別なのだろうけど。詩を挫折という視点から眺めたくなったのは、自分がここ数年挫折の連続だったからだ。田村は、僕はキーワードでいうと、「叫び」、「心」、「部屋のない窓」というのが気になった。戦争で「人間的なもの」が壊れたときに、どう人間の自由の領域を守るか、というのがテーゼになっているように思う。いわば文明の挫折を一身に引き受けた。「四千の日と夜」はゲルニカを思わせる絵のような詩だと思う。一大絵巻のような。ゲルニ
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   グループ"第2回批評祭参加作品"
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