■批評祭参加作品■ 「父さん」櫻井雄一/たりぽん(大理 奔)
決意と淋しさが伝わってくる。
この詩には、ひとつの大きな仕掛けが隠されている。
ここから巣立つ者と
ここに叩き返される者のあいだには
ガラスが一枚と
遠い日の影
空港では搭乗待合室と到着出口は明確に分けられており、それらがガラス一枚で隔てられている訳ではない。この親子の、おそらくは父親は「叩き返される者」だったのだろう。これから旅立つ「僕」と見送る「父さん」の距離はガラス一枚ではなく「遠い日の影」。だからこそ「僕」はだだっ子のように泣いたのだろう。そして、その父親の優しい言葉こそが切実であるはずの思いを「あるはず」と
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