詩想 ?7/黒乃 桜
その瞬間、どっかのビルの屋上からあの楽譜をばらまきたい衝動に襲われてしまった。
幸福?幸せ?、不思議に思ったと言うより苛立ちを感じた。
おぼつかなく鍵盤ハーモニカが奏でたメロディも、あの走り書きだってそんなものは微塵も含んでいないように思えた。
「ねぇどこにいけるのかな」
ばらまいてもいいか、と聞いた訳じゃ無かった。
何も言わずにいたら突然そう聞かれた。
誰が?何が?
当たり障りもなく聞けそうな事は沢山浮かんだけど、全部押し込んでしまった。
代わりに、さぁ、と返した。
だってそんなの、自分だって聞きたい事だったかもしれないから。
どこにいけるのかな、なんて。それを俺に聞くなんて。
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