遺書(1)/虹村 凌
こに表現されるのである。故に、ミスは許されない。誤字脱字など以っての他。文法的誤り、熟語の使用方法、その他全てにおいてミスは許されない。
美しい遺書を書く為に、ペン字講座にまで手を出したのだ。しかし、途中で「日本人ならば、ペンなどと言う洋式よりも、筆であろう」と思い、習字講座に変更した。
しかし、なかなか理想の遺書は書き上げられぬ。思った様に滲まず、思わぬ所で滲み、思った様に掠れず、思わぬ所で掠れる。なかなか、思い通りに行かぬのである。少しでも思い通りに行かぬ場合、それは失敗とみなされ、先ほどの様に、クシャクシャに丸められ、投げ捨てられる。
俺はホープに火をつけると、深く吸い込み
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