書かれた-姉/非在の虹
がっている。
姉は彼岸花の中で
恋人と会っていた。
ある日姉は子こどもを連れて恋人と会った。
こどもは居心地が悪いだけだ。
恋人の子供に向ける笑顔はただの愛想に思え
こどもは益々居心地が悪い。
つないでいる姉の手も感触が違って
別人のように感じられ
こどもには居心地が悪いだけだ。
(こどもは彼岸花となる)
姉は密かに宝玉を持っていると言った。
真っ赤な玉だと言った。
それは特殊な形をしていて
勾玉と呼ばれる物だと言った。
しかし姉の唇は色を失って
そのことに気を取られ
こどもは聞いていない。
*
姉は墓地へ走る
夜を眠らず
髪を洗い
体を洗い
墓石を洗う
朝焼けと共にそれらの苦行が終わるだろう
一番鳥の鳴き声が遠く聞こえる
鋭く振動する
掌の中の赤い勾玉
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