面接(12)/虹村 凌
 

 俺は湯船から立ち上がり、栓を抜いて風呂場を出た。その瞬間に、身体が強張る。リビングの明かりがついていて、彼女が帰ってきていたのだ。俺は滴る水滴を拭う事も出来ずに、その場にたたずんでいた。全部、聞かれてた?わからない。ここは、スルーするべきか?どうする?聞かれてたら、スルーは惨めだぞ。まずい、どう動いていいかわからない。どうする?
「お、おかえり。早かったね」
 結局、選んだ言葉はこれだった。
「ただいまー。思ったより早く終わった…って、身体くらい拭けば?」
「あ、あぁ。帰ってきた音が聞こえてなかったんで、驚いちゃって…」
 ここらへんで、何時帰ってきたのか探ろうと思っ
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