面接(16)/虹村 凌
逃したら、何時、言えるのかわからない。
長い沈黙が続く。聞こえるのは、二人の呼吸の音と、浴槽から溢れ出たお湯が、床を叩く音だけだった。
「ねぇ」
「ん?」
「何か喋って」
「うん」
「何でもいいから」
「…何でもいい?」
今しか、無い。
「俺、さ。普通じゃねぇんだ」
「ちょっと変わってるだけだよ」
「違うと思う。君は、一人の時に、自分が見えたりする?」
「どういう事?」
「風呂場とか、冷蔵庫の中とか、色んな処から出てくるんだ」
「自分が?」
「うん」
「幻聴とか幻視とか、じゃなくて?」
「よくわからないけど、俺自身がいる。鏡で
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