面接(16)/虹村 凌
 
うん」
「どうして?」
「俺が、おかしいからかも知れない」
「…離して」
 俺は、ずっと体に廻していた手を解いた。彼女はクルリと向き直ると、唇を押し当てて、舌をねじ込んできた。彼女の右手が、俺の股間を弄った。
「…」
「ねぇ、私が変な女なのも知ってる?」
 彼女は唇を離して言った。二人の唇の間に、細い銀色の色が引いていた。
「それでも、十分じゃないの?」
「…違うんだ」
「何が?」
「違うんだ、色々と」
「どういう事?」
「誰としても、何をしてても、いっつも違和感があるんだ」
「どんな?」
「アイツと違う、って」
「そんなの当たり前じゃない」
「それがずっと離れないんだ。匂いも、感触も、タイミングも、何もかも全部」
「忘れられないの?」
「…そういう事だと、思う」
 俺は俯いて、黙り込んだ。彼女は立ち上がって、そのまま浴室を出た。
   グループ"面接"
   Point(1)