面接(5)/虹村 凌
何の期待もしないで聞いたのだが、
「そうですね」
と言われると、一抹の寂しさを覚える。
「そんな淋しそうな顔、しないで下さい」
「してた?」
「してました」
「そんなつもり、無いんだけどな」
「凄く淋しそうでしたよ」
「演技、下手だからさ」
そういうと、彼女は不思議そうな顔をして俺に聞いた。
「何で、演技なんてするんですか?」
別に大した意味も無いし、理由も無い。ずっと仮面を被ってる訳じゃないし、ずっと演技している訳じゃない。俺の精神力は、そんなに強くないし、集中力も無い。ただ、俺が落ち込んでいる時は、周囲に気を使わせないように、少しだけ、演技をする癖がついていた。それ
[次のページ]
前 次 グループ"面接"
編 削 Point(1)