俳句の非ジョーシキ具体例/佐々宝砂
書に書き残しておきたかったこと、つまり王にとっていちばん大事なことというのが、世間並みの大事なことである「王位継承」なんかではなく「艶文」だったってこと、これはかなり非ジョーシキ度が高い。常識的な連中は眉をひそめるだろう。
外面貞淑だが実はご乱行ばかりという女王や、女と金のことしか考えてない馬鹿王子とか、王位継承をひそかに狙ってるその弟とか、王族はアホばかりだがなるべく操縦しやすいアホが王になるといいなと思ってる家臣だとか、そういう連中が期待に充ちて「艶文」を開いたときのその顔! 想像するとおかしい。王もあの世で吹き出しそう。あるいは超然と彼等を見ているかな。王は正直にして、自分に素直である。王位継承とか遺産とかどうでもいいことはどうでもよくて、どうでもいいから一言も書かない。潔いなあ。見習いたいなあ。と私は思うのであった。
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