03:野良猫たち/chick
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「だってうちの部署の、ほら、広樹さん。あの人もそう言ってたよ。久美ちゃんは一匹狼ならぬ一匹猫だって。彼氏に甘えたりするところ想像できないよ」
驚いた。そう見られていたことにではない。見られていたこと自体に驚いたのだ。
「久美ちゃんって猫だよね。狼みたいにとっつきにくくないし」
あさぎちゃんはそう言ってまた笑った。
違う、私はそう言いたかった。猫なのは私じゃない。あさぎちゃんの方だ。自分が好きだと思った人にしか心を開かないところだってそうだ。何より、あの夢を見ているような気持ちは、タクミといるときとよく似ている。覚めてほしくないけれど、覚めてしまっても寂しくならない、そんな夢。
「久美ちゃんの元彼ってどんな人だったの?」
「猫に似ていないってことは確か」
「何それ」
そう言ってあさぎちゃんはやっぱり笑うだけだった。
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