水記憶/木屋 亞万
記憶を作っていく
水のアルバムを開いて見ると
丁寧に遺された景色たちがあった
新聞記事を集める時に
記事自体は流すように読み
わからないところなど気にも留めず
切り取る作業だけは
何倍も細やかに
遺しておく
記憶で膨れ上がったノート
別れは日常茶飯事で
滝ぐらいの落下なら
ひとつながりの流れと見る
木陰の落ち着いた流れの場所で
在りし日を振り返ってみたり
石にぶち当たる渓流の中で
周囲の有難みを感じてみたり
浅瀬の汚れた泡の中
弾けた空に酔ってみたり
雨上がりの空に戦意はない
ただ善意とともに
水の変遷に光を注ぐ
今日もどこかで光合成が
水と太陽の呼吸の中
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