寂ビル/木屋 亞万
 
君がシャツを脱ぐ頃には
茶色になっているだろう


錆びたビルが立ち並ぶ街
重なり合う建物の影
隙間を走り行く黄色い光
細くて長くてどうやら
電車らしかった点線
紅い夕日が遠く滲んで
夜になれば影より闇
多くの影を乗せたまま
急行は闇をも走り抜ける
空には月が尖った口先で
口笛を吹きながら
錆びた建物をへし折る


月の唇が乾いたのか
夜中には雨が降った
全てのビルを濡らす
裸のクチビルが叫んだ
何もかも錆びてしまえと
影はそれを黙って聞いて
じっと見つめていた


サビタクチビルガ
カタカタナッテル
ツキナミナウタヲ
ウタオウトスルモ
アメカゼガツヨク
クチビルハカワク


途切れ途切れに
月の口笛が響く
雨風の強い夜に
君は私を脱いだ

   グループ"象徴は雨"
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