走れ青い鳥/木屋 亞万
 
透けるレースのカーテン揺れて
弦はさりげなく弾かれていく
庭から伸びる仲良しな枝の先
蓄えていく思いつきのメロディ

楽譜に記録する事をあきらめた少年
鉛筆を放り出してハミングする
息を吸えば枝葉の蓄えた水が
ビオラの音色で肺に流れ込む

晴れの日には弦の歌を唄い
雨の日には打楽器で曲を奏でる
風と光のハーモニィに反応する鼻
雨粒と大地のうねりに打たれる口

少年は長閑な農村において
想像と創造の渦を覗くことができた
鳥のソロより川のアドリブを好み
雷の変調に胸を高鳴らせていた

耳を澄ませば音の山を歩ける
目を閉じれば此処以外のどこへでも
鉛筆を机の端へと転がして
大きすぎる椅子にもたれ掛かれば



これはまだ少年が純粋に少年であった頃
世界がひそかに彼を愛していた頃の
彼がまだ学校に行っていなかった時分の話
彼が目を開き耳を閉ざしてしまう前の話だ


   グループ"象徴は雨"
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