時の隙間/木屋 亞万
雲ももう逃げないから
一つずつ目に収めていこう
太陽が昇ることも沈むこともない
雨が降ることも風が吹くこともない
太陽を沈めるためには私が太陽から離れ
昇らせるためにはまた近づくしかないのだ
動かぬ地球の変わりに私がぐるりと一周して
停止した瞬間を拾い集めて一日を作っていく
雨の降っているところでは
水滴が浮いている
私は傘をさして歩く
降らぬ雨に濡れることはないと知りながら
生きていた頃の名残として私は、いつも傘をさす
風がないと荒野も森も死んだように
静まり返っている
そうだ、ここは死の世界だと
改めて呟いてみたりする
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