中野アンダーグラウンド/1486 106
公園のような広場に人だかりが出来ていたので
覗いてみるとワンピースの女性が弾き語りをしていた
声は島谷ひとみに似ていて
私は上手いとは感じなかったが
聴衆は何人も涙を浮かべていた
それにしても東京で生きるというのは
そんなに悲しいものなのだろうか
誰しも胸に傷跡を秘めて
それを撫でてくれる人を探している
家に着いたのは夜十時過ぎで
夕飯を買いにそのままスーパーへ出掛けた
3割引の惣菜を温めようと
電子レンジに並んでいると
前にいた四十歳くらいの女性が
店内の休憩スペースで弁当を食べはじめた
何故家で食べないのだろうか
家に帰っても誰もいないのか
家で一緒に食べたくないのか
余計な詮索が頭を過る
それにしても東京で生きるというのは
そんなに淋しいものなのだろうか
人は溢れるほどいるのに
繋がりあう術を知らない
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