沈黙の内側、ダイヤグラムは途切れたものばかりで体裁を整えている(6・完結)/ホロウ・シカエルボク
少し上げると、妙にしんとした膝がふたつこちらを向いているのが見えた。俺はそのままの姿勢で何度か深呼吸をしてから身体を起こした。二、三度頭を振って狂った平衡感覚をリセットし、腐臭と向かい合った。
腐臭は、絶望という感覚を最速で伝えることが出来る表情で立ち尽くしていた。両の眼からは涙が流れていた。驚くほど透明な涙だった。さっきまで俺の喉を絞め上げていた両の腕は物乞いの様にこちらに差し出され―その先は手首から迷子になったみたいに消失していた。
「消える!」
奴はとうとう知ってしまったという様子でそう叫んだ。眼の中の陰がいっそう暗くなった。間に合わなかったのか、それとも…「そういうことになってい
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