■批評祭参加作品■木葉揺 その個性の行方/岡部淳太郎
 
違和感が残る。そして、筆者が先ほど「その「才能」は括弧つきで留保しておきたい」と言ったのは、こういう部分を指している。特異な個性が、時に「普通であること」への欲求に負けてしまうのだ。
 木葉揺の詩をまとめて読んでみると、詩人自身は自らの個性に対して自覚的であったりそれを厭わしく思ったり、名前の通りに「揺」れているように思える。たとえば「涙の海でおぼれよう」などの抒情的な詩は、まったく詩人の個性に似つかわしくないと感じる。このようないわゆる「普通の抒情詩」だったら、もっとうまく書ける人は他にいる。
 おそらくこの詩人は、詩の中に自らの個性を出すことに引け目を感じている(あるいは羞恥を感じていると
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