■批評祭参加作品■木葉揺 その個性の行方/岡部淳太郎
 
個性というものを最大限生かすためには、どうしたらよいのだろうか。一般論は言えないが、彼女の場合は、現代詩なら現代詩、抒情詩なら抒情詩と、ひとつの決まったフォルム(定型ということではない)に個性を滲みこませるような書き方が有効だろうと思われる。先ほど引いた「二千年目のすれ違い」は抒情詩のフォルムに個性を滲みこませているし、「てのひらサンプル」は物語のフォルムの中に、「暴力ラフランス」は現代詩のフォルムの中に、それぞれ個性を滲みこませている(ちなみに彼女の詩にはタイトルだけでも面白いものが多いが、そのへんの命名のセンスも個性の現われのひとつだろう)。もしこの詩人が美しい抒情詩を書きたいと願うのならば、
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