祈り/さくらほ
こつんこつんと人にぶつかりながら
下町の商店街を通り抜け
神社の境内に入ると空気が変わる
人々から顔の険がとれ
階段をおとなしく上り
順番を待ち賽銭を投げる
大人は子供の前では見せた事のないような神妙な顔で
子供はその大人に倣い少し照れくさそうに
手を打ち祈る
あの人の祈りも
この人の祈りも
私の祈りも
ざわめきの中にとけてゆく
祈り終えて階段を降りていく人々の顔は
少しだけやり遂げた顔
また人ごみの中へ帰ってゆく
祈りはどこに届くのか
きっとそれはどこでもない
祈りは自分の胸にこだまする
平和な時代の祈りは優しい
そうであってほしいと願う
戻る 編 削 Point(9)