湖/茉莉香
淡水は海水と違い泳ぐと身体がどんどん
重く感じると今更にそれを実感しながら
私は一歩ずつ深みに誘われ行く
毎日毎日私はこの湖へ通い
あの人からのプレゼントを持ち物を
沈めていったのです
あるモノはずぶずぶとすぐ目の前から消え
あるモノはぷっかりと浮かび見えなくなるまで
ゆらゆらと揺れては名残惜しげに身を隠しました
あの人を消すためあらゆる努力をしたのですが
目を閉じれば残像が目を開ければ残り香が
嵐のような旋律が身体に走り私は縛られるのです
最後のあの人の残りモノを湖に沈めた後
私はまだモウひとつあることに気がついたのでした
湖の水はこの時期は身体を割くような冷たさです
身体はまだあの人を忘れることは出来ないと涙は未だ流れ
諦めは心をずっしりと重くし、湖に私を沈めます
水が体内に流れ込んできました
全てのモノと一緒に私の身体はこの湖に留まることでしょう
あの人にとっては結局ちっぽけな存在の私は
これしか無かったのです
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