soul&snow/佐野みお
 
雪も降らないまま年が明けて
アパートの隣人は帰省したまま
窓の下のちょっとした幹線を
行き過ぎる車もまだ少ない
そんな夕暮れ時、あなたからの電話

あなたはもう恋なんてしない人
ずっとそう思い込んでいた
キャバレーのステージで歌う
あなたの声の冷ややかさに

「何を諦めてしまったの?」
「いつまで飲んだくれてるのよ」
閉店まぎわ終電も逃した二人は
ひそやかな乾杯をした、十一月
それが始まりだった

デートなんて洒落たものじゃなかった
あなたの引越しの手伝いの後
段ボールに囲まれて鍋をつついた
段ボールの隙間で抱き合った
どこかで犬の切ない鳴き声がしていた
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