『 思 い 』/しらいし いちみ 
 

男は病気にかかっていた。

しかし、とっても幸せだ。
なによりも心が満たされている。

だって、家に帰ると大好きな人が待っていた。

だから仕事も辛いと思わないし、体も苦しいと思わなかった。

待ってくれてる人は初恋の人で、それからずーっと一緒だ。
どんなことでも、苦しいことでも、我慢が出来た。

彼女が優しく笑う口元も、白い細い指も初々しくって。。
そのどれを一つとっても男には、初夏の風のように煌いて見えた。

男は仕事が終ると、大好きな待っている人の所に一目散に帰る。
そうして二人の時間を次の朝まで静かに過す。

もうこうやって15年。
男は病気だ。
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