時が発つ/茉莉香
除夜の鐘が鳴るたび夜は更け
私の手元には読みかけの本
なにも変わらずただ
静かな世界に時だけが音を刻む
目を瞑ると蘇るのは
外の木々と爽やかな風
傍に居るのが自然だった貴方の笑顔
静けさに抵抗もしなくなり
独りでいることに慣れ始めてきた
記憶は突如として蘇り
戸惑いを隠しきれないちっぽけな私は
おろおろと携帯に手を伸ばしかけ
その手を本へ戻す
年が変わる 決して何も状況は変わらないけど
年が変わる 記憶を踏み台にして
新たな世界を覗こう
ほら 時が発つから
飛び乗って
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