故郷の駅/fukuonara
 
働きに出ている母を気づかって
迎えに来ていたのだ
雨ならば 早く帰るかも知れないと思い

家に帰り 中学生の姉が作ってくれていた
冷めた夕飯を口にした みんな無口でだった
その日も 母の帰りは遅かった

そして五〇年 母は亡く
私は奈良で暮らしている
教員生活の定年を間近にひかえ
妻と娘の三人でかこむ食卓はあたたかい
鍋からあがる湯気と香り 一杯のビール
つつましいけれど 私にはご馳走だ

故郷の駅で少年が思いえがいた夢は
どんなだっただろうか
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