作品が人を傷つける/渦巻二三五
 
 昔、ネットである人の書いた作品を読んでいたく心傷ついたことがありました。
 数首の短歌が書き込まれていて、一つは我が子の靴を見てその成長を思う、といった内容の歌だったのですが、そのすぐ次に書かれていたのが、はらりと散る木蓮の花弁を石女(うまずめ)の乳房に喩えたものでした。
 どちらの歌も、それ一首のみであったなら、あるいは、私が目にするのがそれぞれ別の機会であったなら、自分の子を持たない私が読んでも傷つくことはなかったでしょう。こどもの靴を通して母の心情をうたった歌であり、木蓮の白い花弁を鮮烈に印象づける歌であり、それぞれに良い歌として鑑賞できたはずです。けれども、その二首が並べられて
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