そこにある空/夕凪ここあ
旧校舎の
三階と四階の間の
踊り場の窓から覗く景色は
いつも違う
ことを知ってるのは
私と少女だけ
少女は
私たちと
制服が違う
遠いところから来たから
ただそれだけで
何か不思議な
匂いがした
少女の眼差しは
いつも冷たくて
誰も触れたがらない
まっすぐ見つめると
何か知らない色のようで
私にとってそれは
物悲しさ、で
放っておけない虚ろ
少女との出会いは
旧校舎の窓辺
放課後
どこからか聴こえる歌に
見上げれば少女
透明な歌
透明な表情
少女の声は、それ以来
図書室で少女は
辞書ばかりを
好んで手にとる
誰もいない
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