常夜灯の下で 銀の夜を溶かして/蒸発王
今夜は酷い夜霧だ
むやみやたらに出歩くと
街の真中で遭難してしまいますよ
旦那
今日の所は
この常夜灯の下で
霧宿りいたしましょうよ
『常夜灯の下で』 ―銀の夜を溶かして―
((((―オオ――ン ―― オ―――− ン− −))))
ああ
犬の遠吠えですよ旦那
哀しい気持ちになりますねぇ
何故って
旦那
遠吠えは恋歌ではないですか
ずぅっと
前の話でございますよ
まだ犬は狼だった時代でございます
といっても
『彼』は最期の生残りだったのですけどね
矢張り寂しくて
自分と少しでも似たモノを探したのです
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