聖夜の奇跡/逢坂桜
最低の男と切れたかった。
わがままで自己中で、嘘と暴力と借金。
涙が流れる内はまだましで、最後には乾ききった。
ゴミだらけの部屋で、青アザだらけの体で、汚れた壁を見つめた。
いま―
狭いながらもあたたかい部屋で、
コンビニだけど、クリスマスケーキがあって、
ケータイで隠し撮りした写真を見ながら、つい微笑んでしまう。
あの頃―
最低まで堕ちたあいつとあたしは、
もう、顔を合わせれば暴力で金を奪われて、
地獄だと認めたくなくてもそれは地獄以外のなにものでもなくて、
包丁や剃刀を、ギラついた眼で握っていた
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