遠雷?解体されながら/前田ふむふむ
 
静かに透過してゆく。

遠く流れていった、
夏のもえる樹木の乱舞。
秋の夕暮れの赤い炎。
失われたときが、わたしの遺伝子のなかで、
寂しく沸騰している。

儚く墜落した過去を堰きとめている、
運河が凍る、水彩画のような冬。
冷たく解体されながら、
わたしの眼差しは、遠くに、白く薄化粧した、
古い山脈の背骨の列を、貫く。
   遥かに充ちる遠雷を、聴きながら。

 ・・・・・・

( 北緯35度東経130度、波は穏やかなり。
( こちら最前線異常なし、どうぞ。
( こちら最前線異常なし、どうぞ。

解体されながら、激しく、逞しく、生まれる朝に。
深々と降る雪の結晶が、
海に短い生涯を沈める。


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