遠雷?解体されながら/前田ふむふむ
 
蒼い海峡の水面に、座礁した街がゆれる。
煌々と月に照らされて。
わたしが走るように過ぎた感傷的な浜辺が、
次々と隠されてゆき、
閉ざされた記憶の壁が、満潮の波に溶けて、
どよめいては、消えてゆく。
その傍らを、捨象されて、
わたしの痩せた手で、触れなかった、
夥しいひかりの驟雨たちが、
盲目の景色のなかで浮遊している。
そのなきがらを、
黄昏ゆく枯葉の波を受けて、眠るあなたに、
せめて、見せてあげたい。

潜在の地平線の果てを逝く、
ひかりの砂塵を、見送る他者の木霊たちが、
あなたであって欲しい。

わたしの瞳孔を潤す、暖かい水脈が、
掌に滲んでくる。
手に
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