雪/下門鮎子
雪をひとすくいすると
そこには
南のきみたちの
あこがれが埋まっていた
冷たいぼくの手と
冷たくないきみの手
(手袋あげようか)
(いいよ、雪があたたかいから)
雪があたたかいだって?
ぼくはきみの手を見る
赤く霜焼けてふくれた手
(だめだ、手袋しなきゃ)
無理やりわたすと
南のきみは
また雪と戯れた
波と戯れるように
ぬなぬな していた
(きみらのとこには
大きな飛行場があるんだってな)
うん ときみはわき目もふらず
雪をすくい続ける
飛行場は
きみには珍しくもなく
雪はきっと
そんなにも珍しいんだろう
(きみらのとこ
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