雪/下門鮎子
 
雪をひとすくいすると
そこには
南のきみたちの
あこがれが埋まっていた
冷たいぼくの手と
冷たくないきみの手

(手袋あげようか)
(いいよ、雪があたたかいから)

雪があたたかいだって?
ぼくはきみの手を見る
赤く霜焼けてふくれた手

(だめだ、手袋しなきゃ)

無理やりわたすと
南のきみは
また雪と戯れた
波と戯れるように
ぬなぬな していた

(きみらのとこには
大きな飛行場があるんだってな)

うん ときみはわき目もふらず
雪をすくい続ける
飛行場は
きみには珍しくもなく
雪はきっと
そんなにも珍しいんだろう

(きみらのとこ
[次のページ]
戻る   Point(5)