くまの/水町綜助
12月に雨は
不意に止み
突然降り出し
しかし僕は夏のさなかとかわらず
鬱蒼とした森の奥の洞窟
その奥の方へ
ぼんやりと
歩く
黄色い毛並みの蜂蜜熊のように怠慢
洞窟は
洞窟の中は
夏はひんやりと冷たく
冬はやわらかく暖かい
僕はちょうど一番奥で
行き止まりにどっかり腰を据えると
きのうそこに置いておいた蜜壷をとり
左手で壷のくびれに手を回し抱いて
右手ではちみつを掬う
僕は苦い顔ではちみつをみつめると
一息に口に押し込み
「ぐぅ」とか呻いて怒りの表情を
舌で蜜をかき回し
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)