桔梗、枯れた/長谷伸太
 
町中の人びとは耳から点滴をぶらさげ
線路の上は魔女で賑わい
雨がふれば毛取りおばばは仕事にはげみ
こんな世の中だからか
私にも不思議な力が宿ってしまった

思いもよらぬ電話が入り
会うことも無いだろうと思っていた
古い友に会うことになり
こんな良いことがあるのなら
もうおじさんになれなくてもいいかと思った

枯らしてしまった花の顔は
もう思い出せなくなった
涙が洗いながしたし
時間が踏みつけて消えてしまった
どの花を見てもあの花かと思ってしまう

何も変わりにならないと思っていたが
どうやらなんでもいいらしい
私のいいかげんな心にもすっかり慣れて
悲しいと思うことが少なくなった

たしかに青むらさき色だったらしい
すこしまえの私
さようなら

たまに電話してくれたら
お茶でもしたいと思う
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