金色の海で/蒸発王
 
金色の海で
私は上手く笑えていただろうか


『金色の海で』


郵便受けに
見なれない封筒が入っていた
差出人は
失踪した親友からだった


彼は
一年前に妻子を亡くし
もう若くはなかったから
“遺される”その苦さに
耐えられなかったのだろう

二人分の葬儀の終わった夜
少し目を離した隙に
ふつり と
消えてしまった


煙のようだった


其の
彼からの手紙

乾いた指で
封を切る
見覚えのある
すこし右斜め上にせりあがった
文字面で
一言


“金色の海で会いたい”



金色の海

思い当たるのは

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