金色の海で/蒸発王
金色の海で
私は上手く笑えていただろうか
『金色の海で』
郵便受けに
見なれない封筒が入っていた
差出人は
失踪した親友からだった
彼は
一年前に妻子を亡くし
もう若くはなかったから
“遺される”その苦さに
耐えられなかったのだろう
二人分の葬儀の終わった夜
少し目を離した隙に
ふつり と
消えてしまった
煙のようだった
其の
彼からの手紙
乾いた指で
封を切る
見覚えのある
すこし右斜め上にせりあがった
文字面で
一言
“金色の海で会いたい”
金色の海
思い当たるのは
[次のページ]
戻る 編 削 Point(8)