『夜を共有しよう』/
しめじ
めずらしく静かな夜
疲れた体を横たえて
左手を眺める
夜の匂い
似ている指先
右手で包んで胸の上に乗せる
キリギリスの鳴き声
蛍光灯が切れかかっている
小川のせせらぎが聞こえた気がして目を開ける
それは幸せな記憶
赤い色鉛筆が転がって
キャッチボールをする親子の群像
宙に舞うワイングラス
街はまだ眠らない
左手を眺める
少しだけ幼い手の甲に唇をあてる
夜が回りだす
月は雲隠れして
どこからか読経が聞こえる
祈りは届くのか
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