十一月はバラード/千波 一也
 

とじゆく風にひらかれて

それがあるいは逆だとしても
なおさら地図は
紙切れとなる



吐息はつまり消える熱

硝子に映る秒針を
遠ざけるものは
いつでも
そばに



こまやかな星座の
その呼び方を
失う痛みはもう聞こえない


感傷を
わすれるための感傷は
ささいな温度で
にわかに
とける



十一月はバラード

惜しむ隙間もなくした雑踏で
きまぐれな鍵が
ひとり
遊ぶ


十一月はバラード

なりゆきの人たちにも
避けたかった人たちにも
とべない翼が
降り積もる



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