さくら/狸亭
 

さくら さくら さくら
さくら 咲く
サ 暗さ 苦。

年年歳歳花相似たり というけれど
さくら の 花の色 の
なんという まばゆさ。

還暦を過ぎて二年
さくらを見なかった。

だから
さくら
さくら
さくら

しろいさくら
あかいさくら
ぴんくのさくら

満開のさくら。

青空のさくら
曇天のさくら
濡れるさくら
風に舞うさくら。

「年をとるごとにさくらの花の色がきれいになるなあ」と言うと、ハナコは「それはそお、桜の樹だって老木ほど落着いてきて風格があって見事なものよ。ニンゲンもそうありたいものね」と返してくる。

そうじゃないのだ。
花のウツクシサは
見る者の年齢に応じて深まるのだ。

花に酔う。

ふるさとの無いぼくには
さくらの花の生成のはげしさ
こわさ
おそろしさ
つややかさ
はなやかさ
はかなさ

さくら の 色と 匂いと 形 の 交歓
花戦(はないくさ) の只中に 一時の ふるさと を。

サ 暗さ 苦。

さくら。

20000413

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