芽吹く/夕凪ここあ
 
まためぐる季節に
埋もれてくしろいまち
夜が来るたびに
暗がりの向こうから
沈黙を引き連れて降る白

霜焼けの幼い手のひら
目が眩むような世界に
迷い込んでしまわないよう伸ばす手
誰でもいい 大人の手を
握っていたかった冬の日

こんな日は ねぇ、お母さん
眠る前にあたたかいミルクが飲みたい
こんな夜は ねぇ、お父さん
眠るまで大きな手で髪を撫でていてほしい
この町でどのくらいの子が
こうして明日を迎える準備をするのかしら

しろいまち
だからこの町では誰もがやさしい
やさしさに色をつけるなら
さくら色がいい
なんて、何度想っただろう
幼い手の触れる
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